【Incident Report】複数のダイブコンピューターの使用

レギュレーターのフリーフロートラブルが発生。
別のレギュレーターに交換することにしたが、コンピューターはゲージ一体型だった。
新しいコンピューターを使用してダイビングをしてもよいだろうか?

[報告されたケース]

私が午前中3本目のダイビングを終了した後、セカンドステージのフリーフロートラブルにより一組のバディが浮上しているのを見かけました。水面休息中、このバディと数人のダイバー達は、このトラブルを解決しようとしていました。しかし、トラブルはレギュレーターの故障が原因で、修理が出来ないという判断となったようです。そこで、グループの中の1人が予備のレギュレーターをダイバーに提供し、ダイビングを続けるよう伝えていました。

その後私は、借りたレギュレーターの、ゲージと一体化しているダイブコンピューターの使用について、ダイバーたちが話をしているのを耳にしました。誰かが「同じ種類のダイブコンピューターだから、何の問題もなく使用できるよ」と言っていました。

その言葉を聞き、私はすぐに「新しいダイブコンピューターを使わない方が良いですよ」とアドバイスしました。なぜなら、すでに終了した2本の水深24m以上のダイビングで体内に吸収された窒素量が、計算されないからです。レギュレーターをトラブルダイバーに提供することに集中しすぎて、誰もこの問題に気付いていませんでした。

私は、午前中に使用したダイブコンピューターを引き続き使用するよう、ダイバーに勧めました。ダイバーはその勧めに従い、残りの旅行中問題なく潜り続けることが出来ました。そのまま潜ったら減圧症(DCS)を発症したかもしれない状況を、回避できたのです。

[専門家からのコメント]

このダイバーは、非常によいアドバイスをしました。
ダイブコンピューターは、各ダイバーが個別に使用する機器です。そして、ダイブコンピューターは、24時間以内の水面休息時間により区切られたダイビングを記録し、体内の窒素量を計算する機能しかありません。

同じ日に、複数のダイブコンピューターを使い分けてダイビングをしてはいけません。加えて、経験と知識が豊富なダイバーは、第三者であっても適切なアドバイスをすることを迷わないでください。
アドバイスにより、誰かの命を救うことが出来るかもしれないのです。

– Dr. Petar J. Denoble

【ADMプロ】日本高気圧環境・潜水医学会の「見解」を読み解く


「再圧治療は必要ない」に端を発する減圧症治療の再確認

日本高気圧環境・潜水医学会が「減圧症に対する高気圧酸素治療(再圧治療)と大気圧下酸素吸入」の見解を発表(日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 Vol.53No.3)。減圧症への処置として、再圧治療が基本であり、「潜水後の大気圧下の酸素吸入は(中略)効果に限界があるため、再圧治療にとってかわる治療法とはならない」との見解を示した。

これまでも減圧症の標準治療であった再圧治療を、改めて見解として示したのには理由がある。2016年の同学会学術総会において、再圧治療に疑問を投げかけ、「減圧障害に再圧治療が必要なく、大気圧下での酸素投与で十分である」という内容の講演に端を発し、2017年同学会関東地方会においても同趣旨の講演が行われた。減圧症の標準治療である再圧治療を否定しかねない内容に、専門医からも否定的な声があがり、アカデミックな場での議論が求められ、そこでのコンセンサスが注目されたのだ。

こうした流れの中で、DAN JAPANも本誌「Alert Diver Monthly」(2017年Vol.07SEPTEMBER)の中で、「従来通り、減圧障害には(特に重症の場合)、一刻も早い再圧治療が必要である」と、再圧不要論のカウンターともいうべき、再圧治療の有効性と必要性を述べている。

さらに懸念されたのが、ダイビング事業者や一般ダイバーへの影響だ。インストラクターを含むダイバーを会員とする団体のセミナーにおいて、同医師による学会講演と同趣旨の講演が行われた。医師によっては否定的な見解が示され、しかも、ある意味、これまでのスタンダードと真逆の処置が普及していくことに危機感を強めたことも、今回の学会による見解発表につながっているだろう。


「酸素吸入は有効」は共通認識

ここで間違っていけないのは、「減圧症に対して、大気圧下での酸素吸入は有効」であり、これは専門医の共通認識であること。軽症であれば再圧治療が遅れてもよい場合があり、酸素吸入により減圧症の症状改善を狙うことは現実的で有効な選択肢だ。さらに、再圧治療施設の無いような僻地では、重症の場合でも酸素吸入が応急手当として第一の選択とせざるを得ない。

また、米国の高気圧潜水医学会である「Undersea & Hyperbaric MedicalSociety(UHMS)」を中心としたグローバルスタンダードでは、再圧治療が必須でない軽症減圧障害と緊急性の高い重症者を、分けて考えるというのがトレンドだ。

このような流れを見ると、問題視された講演の内容についても重なる部分もあり、後に、「再圧治療を完全否定しているわけではない」との見解も示されている。だからこそ、専門医における十分な議論とコンセンサスが必要であり、ダイバーへのアナウンスにも慎重でなければならなかったのであろう。

しかし、再圧治療に必要な施設や人員の不足という課題に直面し、DAN JAPANや専門医たちがネットワークの構築や治療補助制度を通じて効率のよい再圧治療の環境を整えることに尽力する中、再圧治療の否定ともとれる内容と一般ダイバーにも及ぶ言論活動は、医師たちに不適切と受け止められ、見解によって否定された。


潜水医学と情報リテラシー 常に情報をアップデート

我々ダイバーは、こうした医学的な論に接するとき、どのように情報を読み解けばいいのだろうか。多様な意見があり、自分の頭で考え選択することは健全で重要だが、現実問題として、医師の間でも意見の分かれる医学的な議論について、医師でないダイバーが評価することは難しい。“危ない” とも言い替えられるかもしれない。オカルトやデマを排除し、科学を基準とする現代社会において、専門家の合議制である学会がそれを評価する役割を果たしている。潜水医学もまた、その装置を経た見解と相対化して検討しなければならない。そういう意味では、専門医との連携で成り立つDAN JAPANの情報をカバーし、常にアップデートしておくことは、少なくともダイビングを生活の糧とするダイバーには必須であろう。

また、アカデミックの世界で定まっていない新説・仮説をアナウンスする際は、発信者の立場に応じた注意が必要だ。減圧症の対処法について、論文を精査して判断するダイバーはほとんどいないだろう。ダイバーはインストラクターやガイドが言うことを信じ、インストラクターは専門医が言うことを信じる。つまり、医師により意見が分かれている論があった場合には、インストラクターがリーチした医師次第で真逆の減圧症の処置が示され、それが広まってしまうリスクがあるということだ。ましてや「再圧治療はいらない」というダイバーにとってインパクトの大きいキャッチは、SNSでたちまち拡散し、内容が語られることなくインプレッションのみ残す。

特にダイバーに影響を与えるインストラクターや社会的に影響のある発信者、あるいは場においては、このリスクを認識し、より慎重な発信が求められる。反対の意見も示すなど、新説・仮説を相対化して伝えるべきであり、今回のように最終的に学会の見解が示された時には、議論の結論として伝える責務があるだろう。


再圧治療に第1種装置を有効活用 安全基準の見直しを明言

本見解では、再圧治療装置についても重要な指針を示している。第51回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会(2016年)のパネルディスカッション「減圧障害に対する第1種装置での治療の位置づけ」における意見の一致について、その内容を改めて明記(※POINT参照)。これまで、高気圧酸素治療の安全基準では、治療は第2種装置(多人数用)を使用して行わなければならないとされていたが、第1種装置(一人用)を減圧障害の治療に有効に用いることを可能にすべく、安全基準を見直すことを明確に表明した。

これは、減圧症に対する処置として第1種装置の有効性が確認されたことはもちろん、第2種装置の分布に偏りがある、という現実的な問題への対処としての意味合いもある。特に重症患者や僻地における罹患者が、迅速な再圧治療が受けられる意義は大きい。

ただ、その運用には専門医の助言を得ることが推奨とされ、裏をかえせば人員確保の課題も残す。そういう意味でも、専門的知識とネットワークをベースに、公的機関、医師、ダイバーをつなぎ、適切な対処法や搬送先について相談できるDAN JAPANの緊急ネットワークの存在は重要だ。その一員になっておくことは、減圧障害に対する現実的な対策であり、ダイバー自身によるセーフティーネットワークの維持のためにも最善の選択だろう。

*本稿は会報誌「Alert Diver Monthly Vol.21」からの引用記事です。

POINT

「減圧障害に対する第1種装置での治療の位置づけ」における意見の一致
第51回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会(2016年)パネルディスカッション


① 第1種装置がエア・ブレイク可能であれば、軽症からバイタルが安定している重症まで対応が可能である。
② 第1種装置がエア・ブレイクできない場合は、応急治療として安定化を図り、標準治療ができる施設と連携する。
③ 治療経験の少ない施設が第1種装置で再圧治療を実施する場合は、経験のある専門医から助言を得ることを推奨する。
④ できるだけ速やかに安全基準の再圧治療指針を見直して改正すべきである。

    Referencematerial 参考資料ダウンロード


    ●日本高気圧環境・潜水医学会HPより
    【見解】減圧症に対する高気圧酸素治療(再圧治療)と大気圧酸素吸入
    http://journal.jshm.net/lib/2018/533-01.pdf

      Profile

      【寺山英樹】(Office Divingman)
      法政大学アクアダイビングクラブ時にインストラクターを取得し、卒業後はダイビング誌の編集者として世界の海を取材。ダイビング入門誌副編集長、ダイビングWEBサイト「Ocean+α」編集長を経て、現在「Office Divingman」主宰。
      ■スキルアップ寺子屋(著)、セーフダイブ・ハンドブック、安全ダイビング提言集など

【Medical FAQ/医療相談】結核の既往とダイビング

◆相談内容◆

質問者:男性・年齢不明

7年程度前に肺結核と診断を受けました。1年間の経過観察後、担当医師より完治との診断を受けたので、数回にわたり体験ダイビングをしました。
今回、ショップで体験ダイビングを申し込んだところ、「既往歴はありますか?」と聞かれ、正直に回答したところ、「医師の診断書がないとサービス提供できない」旨のメールと共にDANのメディカルチェック(参加者用)が送られてきました。

完治から時間が経っているため今は当時の主治医にかかっておらず、診断書を依頼するのは困難です。
また、DANのメディカルチェック(医師用)、潜水指導団体の病歴診断書のどちらにも「結核」に関する記載はありませんでした。
結核はダイビング適性とどのように関係するのでしょうか。医師の診断書は本当に必要でしょうか。

◆医師からの回答◆

◎結核とは
結核は結核菌による感染症です。肺以外にも、リンパ節、脊椎、腸なども侵されます。
肺結核では、肺に空洞性病変を作ります。

【結核とダイビング適性】
肺の空洞性病変は、潜水中に空気を捕捉することがあり(エアートラッピング)、浮上時にその空気が膨張することにより組織が破れる危険性があります。
よって、DAN JAPANガイドラインでは、硬化性の病変、嚢胞性の病変とともに、空洞を伴う病変の既往を、肺の気圧外傷を起こす可能性があるため「相対的に危険な状態」としています。よって、ダイビングの実施にあたっては、画像検査(レントゲン、CT等)による空洞性病変の有無の確認、呼吸機能検査が正常であることの確認が求められます。

【今回の質問者の場合】
本件においても、上記検査を行い空洞性病変の有無呼吸機能について確認することが必要です。

【DANのメディカルチェックの重要性について】
質問者はすでに7年程前に結核が完治し、その後数回体験ダイビングをしているとのことです。
よって、その際に上記の精査と検討が行われており、異常がないことは質問者にとっては自明なのかもしれません。しかし、今回新たなダイビングショップで体験ダイビングを申し込んだのであれば、異常がないことは、そちらのスタッフにとっては自明なことではありません。
よって、DANのメディカルチェックによって情報提供していただくことが重要となります。

もちろん、「肺結核は完治した、以前に検査もして潜水は可能と診断されている」との質問者の口頭での説明をそのまま認めるダイビングショップもあるかもしれません。
しかし、患者の自己申告が医学的に必ずしも正しくないことは珍しくないのです(患者は医学の専門家ではないのでやむをえません)。

医師が医療機関間で患者のやり取りを行う場合(手術のお願い、転居による転医等)は、必ず紹介状を患者に持たせます。それと同じように、今回のダイビングショップの対応についても、メディカルチェック用紙記載を求めたということは、医学的に正確な情報を得ることでゲストの安全に配慮しているということであり、むしろ丁寧な対応であると考えます。

当時の主治医を受診することが難しければ、潜水医学に詳しい内科医(DAN JAPANのサイトから検索できます)を受診し、結核の既往を説明したうえで、相談して記載してもらうのがよいでしょう。

◆後日報告◆
潜水医学に詳しい内科医を受診(胸部CTと肺機能検査)。
検査の結果、癒着が見られたため、スノーケルのみの限定許可となりました。

―DAN JAPANメディカルチーム

【Incident Report】スチールタンクを使用し、潜降中にバランスを失う

慣れていない重いタンクを使用したため、
潜降中に背中側にひっくり返ってしまった。

[報告されたケース]

今回のダイバーは、経験豊富なダイバーでしたが、他のダイバーより空気の消費量が多いことを自覚していました。このため、グループでダイビングする際、空気消費量が少ないダイバー達も彼のために潜水時間を短縮しなくてはならず、周囲に迷惑をかけていると感じていました。

担当インストラクターは「サイズの大きなスチールタンクで潜れば、水中で呼吸可能な空気量は増加する。でも、タンク自体が重いため、今までと同様の浮力にするためにウェイトを減らさなくてはならない。」とアドバイスしました。
また、マイナス浮力のスチールタンクを使用する際には、注意しないとタンクに引っ張られバランスを失いやすいことを説明し、水中でのタンクの扱い方も指導しました。そして、通常5kgつけていたウェイトを、3kgにすることをアドバイスしました。

その後、ダイバーは大きなスチールタンクを使用して通常通りに潜降を開始し、圧平衡(耳抜き)を始めましました。しかし、スチールタンクの重みで潜降中に後ろに引っ張られ、徐々に足が上の姿勢になり始めた結果、潜降速度が加速し耳抜きをするのが難しくなりました。また、上下逆さになったため、呼吸のたびにレギュレーターの排気バルブから水が入ってくるという問題が生じました。そして、海水を飲んだために、レギュレーター越しに吐いてしまいました。

そこで、ダイバーは潜降を止めるためBCDを膨らませ、姿勢を安定させた後に圧平衡(耳抜き)が可能な深度まで浮上して、吐き気を止めようとしました。そして、担当インストラクターに「水面にまで浮上し、少し落ち着いた後にウェイト調整の必要がある」と合図しました。

その後、このダイバーはツアー最終日までに余分なウェイトを減らし、スチールタンクの重さだけで素晴らしい浮力コントロールができるようになりました。

[専門家からのコメント]

アルミからスチールのタンクに替えるというアドバイスは、「過剰な空気消費から来る不安感を取除くため、水中に多くの空気を運ぶ」という意味では良かったと思います。担当インストラクターは新しい器材構成への助言をし、この器材構成だといくつかの難点があることを指摘したのも、正しかったでしょう。

通常、トレーニング中には「器材の構成を変更した場合には、管理された環境(プールや限定水域など)で試してみる必要性がある」と指導されます。ダイバーは、問題が発生した場合に立つことが出来る浅い水域で、浮力やウェイトの配置を調整し、試すことによって、浮力をコントロールできるようになります。

海で実際にスチールタンクを使用する前に、まずプールで新しい器材構成を試すようにしていれば、より安全な環境で問題を発見でき、ダイバーにとって利益は大きかったと思います。担当インストラクターが全て管理して練習するのではなく、アシストだけでダイバーが新しい器材構成の練習を出来れば、海に行った時さらに自信を持ち落ち着いてダイビングができたでしょう。
もし今回のダイバーがもっと経験やトレーニング不足だったならば、パニックになって急浮上し、より重大な事故になっていた可能性もあります。

【今回のケースで得られた教訓】

●インストラクターと、器材や装備の構成の問題を解決するため一緒に潜るのは、とても良い事です。
●特殊な装備を初めて試す場合は、正式なトレーニングを受けてからダイビングしてください。
●新しい器材に慣れるため、プールや限定された水域等の環境で試すようお勧めします。

– Brian Wake

【Medical FAQ/医療相談】痛風・服薬中ダイバーのダイビング

◆相談内容◆

質問者:男性(インストラクター会員)

痛風の持病があるゲストからのお問合せがありました。
「ダイビング時に痛風の薬(フェブリク錠)を服用していますが、服薬してダイビングをしても問題ないでしょうか」との質問がありました。
ご教示いただきますよう、お願いいたします。

◆医師からの回答◆

◎痛風とは?
痛風とは、尿酸が体内にたまり尿酸結晶となることで激しい関節炎を生じる疾患です。血液中の尿酸値が高い状態を高尿酸血症といい、痛風のほか、腎障害などの原因となります。
痛風の治療は発作時に関節炎に対する消炎鎮痛の治療を行うことと、基盤にある高尿酸血症に対する治療を行うことが重要となります。

また、高尿酸血症はメタボリック症候群のマーカーとして見られることがあります。つまり、尿酸値が高いことが生活習慣病(かつて成人病と言われていました)と関連し、ひいては、心血管系疾患の発症リスクを反映しているのでは、との見解があります。

【高尿酸血症の治療薬】
高尿酸血症の治療薬は大きく2つにわかれます。
1.尿酸の作成を抑える薬
2.尿酸の排泄を促す薬

フェブリク錠は1.にあたる比較的新しい薬剤(2011年より本邦で発売)です。肝機能障害等様々な副作用がありますが、ダイビング上特に着目すべき副作用は指摘できません。

【今回のゲストの場合】
実際の副作用出現状況をゲストに聞いてみるとよいでしょう。激しい運動は尿酸値を上げるので勧められませんが、高尿酸血症の治療として軽い運動はむしろ推奨されますので、その意味では通常のダイビング活動は可能と思います。
ただ、前述したように一定の心血管系のリスクを内在している可能性があるので、そのほかの高血圧などの生活習慣病の有無や運動適性について、主治医と相談するのがよいでしょう。

-DAN JAPANメディカルチーム

【Incident Report】皮膚の発疹を見逃すべきではない

ダイバーは皮膚減圧症(DCS)を発症していたが、気付いていなかった。
その後症状は自然に消失した。《2012年トリニダード・トバゴ》

[報告されたケース]

58歳女性ダイバー(身長180cm/体重75kg)がトリニダード・トバゴにダイビング旅行に行き、毎日複数回のダイビングを6日間連続で行いました。最大深度は全て水深24m以下のダイビングでした。
4日目に、ダイバーは体幹部分の皮膚の発疹に気づきました。原因がわからず、炎症用のAleve*を飲みましたが改善は認められませんでした。その後もダイビングを続けましたが、水中では「皮膚の発疹」が改善することに気づきました。
体幹部分の発疹は、6日目の最終ダイビング後、帰国飛行機搭乗前の時点では消えていました。飛行機の搭乗中については、特に何も報告はありませんでした。
*Aleve=アリーブ/アメリカ市販薬。ナプロキセン系の解熱・鎮痛剤

カナダに帰国後、「ダイビング後のしみのような皮膚の発疹」をネット検索したところ、一番最初に検索に上がってきたのは「皮膚減圧症」でした。この時点でDANに連絡し、紹介された医師の診断を受けるよう指示されました。

帰宅して2日後、最終ダイビングから3日後の診察では、症状はでておらず、身体所見も報告されませんでした。また、神経学的な観点でも損傷は受けておらず、関連する所見も報告されていません。

[専門家からのコメント]

皮膚減圧症は一般的ではなく、多くのダイバーは減圧症(DCS)の症状が皮膚に出現することを知りません。皮膚症状だけなら治療が必要ない可能性もあります。しかし、ダイバーが気付いていない神経症状(知覚障害、痛み、しびれなど)の可能性を除外するために、医学的な評価が必要です。

皮膚減圧症(DCS)は、「チョークス」と呼ばれる、呼吸困難と咳き込みを伴うことがあります。このようなケースでは、神経症状が存在する可能性が高くなります。しかし、神経症状はチョークスを伴わずに存在する可能性もあります。チョークス及び神経症状が出ているダイバーを救急病院に搬送する間は、応急処置として大気圧下での酸素投与をするべきです。

このケースでは、症状は自然に消えました。とはいえ、皮膚発疹が出ているのにダイビングを続けることは勧められません。皮膚の発疹のあるダイバーは、神経症状があるか診察してもらうべきでしょう。

– Petar Denoble, M.D., D.Sc.