(終了しました)DAN酸素インストラクタートレーナー講習開催のお知らせ

DAN酸素トレーナー講習の開催が決定しました。
※新教材をお持ちでない場合、教材のご購入が必要となりますのでご注意ください。

【開催日/場所】
◉横浜会場:2022年1月27日(木)、28日(金) 2日間
(申込期限:2022年1月19日(水)書類事務局必着)
神奈川県横浜市中区本町4-43 A-PLACE馬車道3階 大会議室
開催案内

【講習受講料】
新規講習:44,000円(税込)
更新講習:22,000円(税込)
※教材費(別途):16,800円(税込)

【申込方法】
参加申込書/受講条件確認書
※参加申込書記入⇒所属指導団体より承認印受領⇒受講条件確認書と共にDAN JAPAN事務局へ送付してください。(PDF可)
記載内容を確認後、担当者より受付連絡および受講料・教材費のお支払い依頼のご連絡をさせていただきます。

【お問い合わせ先】
DAN JAPAN事務局 トレーニング担当 白石(シライシ)
☎045-228-3066(平日10:00~16:00)
✉shiraishi@danjapan.gr.jp

Covid-19罹患後のダイビングに関するDANヨーロッパ医師たちの現場での経験

原文はこちら:【DAN Europe Physicians’ Field Experience Regarding Diving After Covid-19】

以下の内容は、DANヨーロッパからの情報で、DANヨーロッパの了解を得て翻訳したものです。
また、この情報は現時点におけるものであり、今後の新しい情報に注意願いますとともに、ダイバーに有益と思われる海外DAN等の情報に接した方は、DAN JAPANまで連絡願います。ダイバーの安全等に係る情報については、極力、翻訳・発信させていただきます。
なお、海外DANの発信する情報には著作権があり、無断で利用することはできませんので、ご注意ください。


COVID-19についてはまだ分からないことがたくさんあり、このウイルスについての知見とダイバーに対する影響については、なお、完全にはわかっていません。そのため、各種のダイビング団体と高圧医学会が編集した医学的勧告の統一見解(”What You Should Know About Diving After Covid-19:Covid-19罹患後のダイビングについて知っておくべきこと“を参照)を再度公表するのに加えて、何人かのDANヨーロッパの医師たちに連絡し、COVID-19に罹患した後でダイビングに復帰したいと思っているダイバーを現場で診た経験について尋ねてみました。具体的には、以下の医師たちに聞きました:Oscar Camacho(ポルトガル)Peter Germonpré(ベルギー)Ole Hyldegaard(デンマーク)Jacek Kot(ポーランド)Anne Räisänen-Sokolowski(フィンランド)Adel Taher(エジプト)Ulich van Laak(ドイツ)Jürg Wendling(スイス)です。この医師たちは、それぞれCOVID-19に罹患したダイバーを2名から20名を治療しています。Dr. Germonpréは、軍のダイバーしか診ていませんが、Dr. Camachoはコマーシャルダイバーもレクリエーショナルダイバーも診ています。以下に、その発言を記します。

DANヨーロッパ:Covid-19罹患後にダイビングに復帰したいという人たちを診て全般的にどうだったか教えてください。

Oscar Camacho (OC):コマーシャルダイバーは全員、この急性疾患で無症状か嗅覚不全/味覚不全(臭いと味の感覚がない)のような軽症でした。レクリエーショナルダイビングに関して言えば、2名のダイバーが重篤でした。2名とも入院しました。1名は一般病室に収容され、非侵襲的換気療法で治療を受けました。もう1名は、集中治療室に6週間収容されました。ダイバー全員(コマーシャルとレクリエーショナルの)が、自分の肺の能力をとても心配し、ダイビングに復帰できるかどうかとても不安がっていました。入院した2名のレクリエーショナルダイバーは、肺のスキャンで両肺の線維症を示唆する画像が得られ、また、すぐに疲れるようになりましたので、私は彼らをダイビングに復帰できないと診断し、6か月後にもう一度診察するつもりです。

Peter Germonpré (PG):全員が軍の医学的基準に従って健康診断を受けました(すなわち、SpO2を計測しての運動負荷試験、肺機能検査、心臓機能検査、肺のCTスキャン)。何人かは、ダイビングの再開が許されるまでに3か月以上の“陸上勤務”になりました。

Ole Hyldegaard (OH):全く問題がないか、大きな呼吸器系の問題はありませんでした。

Jacek Kot (JK):私は、ダイビングに復帰することを希望する1名の医学コンサルタントとして活動しました。

Anne Räisänen-Sokolowski (ARS):全員が軽症で、できるだけ早く潜水に戻りたいとジリジリしていました。

Adel Taher (AT):ほとんどの人は、両側とも空気の入りがよく、臨床的に問題ないように見えました。病歴をとると、COVID-19に罹患したことが判明するか、自分でわかっていて前もってそうだと申告しているかでした。疑わしい場合は、肺のCTを要請しました。感染して2か月未満の場合の数例では、スリガラス様陰影(GGO)が生じているようでした。たいていが基底側に。感染してから4か月から6か月の期間をおいてフォローアップすると、GGOが消失していることが示されました。

Ulich van Laak (UvL):3例全部が、統一見解の勧告に従うのを渋っていて、“手っ取り早く”許可をしてほしいと望んでいました。

Jürg Wendling (JW):ほとんどのレクリエーショナルダイバーと何人かのプロフェッショナルダイバーは、我々の勧告を守ってくれました。急性のCOVID-19の軽症から重症患者の全員が、スイス・フローチャートによる検査で後遺症の徴候はまったくありませんでした(我々は、パルスオキシメトリを使った症状が出ない程度の運動負荷試験/ボディプレチスモグラフィ(肺気量、気道抵抗測定)およびDLCO(肺拡散能力)検査を実施)。ここでの私のコメントは、毎月自分たちの経験についてオンラインミーティングで報告している「スイス水中・高圧医学会(SUHMS)」の最も活動的な潜水医学の専門医の経験をまとめたものであることをお断りしておきたいと思います。

ダイバーが意識しておくべき何か問題になりそうな領域はありますか。

PG:DCS(減圧症)の‘奇妙な’症例は目にしていませんが(‘安全な’ダイビングの後で)、これはおそらく私たちが早期に課した制限のせいかもしれません(オランダ潜水・高圧医学会(DSDHM)ガイドラインは2020年4月に早くも公表されています)。

OH:COVID-19感染で肺の症状が見られたら、ダイビングを再開する前に肺機能検査をするように勧めます(最低でも)。

JK:肺組織の不可逆性変化(コンプライアンスの低下)と運動能力の低下。

ARS:肺が問題になる場合があります。

AT:運動時の酸素飽和度!スパイロメトリ(肺機能検査)における明らかな変化。呼吸器内科医のセカンドオピニオンを要請する場合もあります。

UvL: 「ベルギー潜水・高圧医学会(BSDHM)」やその他から出されているような公開された懸念は、特にスポーツダイビングコミュニティには広く受け入れられてもいませんし、理解されてもいません。科学ダイビングと軍事ダイビングでは全く違っています。

JW
:驚くような経験はありませんでした。ダイバーたちは、ほとんどが身体的能力の低下という形で現れる潜在的な危険についての情報を得ています。私たちはBSDHMグループの警告を共有しています。

ダイバーは、ダイビングに復帰する前に何に注意し、気を付ける必要があるでしょうか。

OC:肺機能!

PG:現在のガイドラインを使えば、明らかな肺/心臓の損傷があるダイバーはダイビングに復帰できないと言って差し支えないと思います。このガイドラインが厳しすぎるといえるかどうかは難しいところです。

OH:COVID-19感染症の重症度によると思います。

JK:運動能力(肉体的なパワー)、スパイロメトリ(肺機能検査)の低下、レントゲン検査の変化、例えば、高解像度コンピュータ断層撮影(HRCT)

ARS
:ダイバーの身体的状態がCOVID感染前のレベルに戻る必要がある。

AT:身体的適性がその人の‘正常の’レベルに次第に戻ることですが、これには予想より長くかかることがよくあります。

UvL:身体的適性と心理的適性がCOVID感染前のようになっていることを、医学的に遂行能力を分析することで確認されていること(スポーツ医学、心臓、肺の専門医によって)

JW:アップデートされた私たちの「スイス水中・高圧医学会(SUHMS)フローチャート」を見てください。

様々な症状を伴う“長期のCovid”を経験したダイバーに対する何か特別なアドバイスはありますか。

OC:ダイバーに心臓の問題があるとか、これまで心疾患になったことがあるなら、肺機能と心臓の検査をしてもらうべきでしょう。

PG:明確な治療方法がありませんので(身体のリハビリプログラムと時間の経過は除く)、ダイバーは我慢してスクーバダイビングを控え、担当の潜水専門医が許可するのを待つことが重要です。プールでのトレーニングはやってもかまいませんが、圧縮ガスを使うトレーニングでは、たとえ非常に浅いところであっても、エアトラップのリスクがあるので、肺機能検査が正常でなければなりません。

OH:肺機能検査と負荷心電図(ECG)検査が正常で、潜水専門医のアドバイスを受ければ、ダイビングを再開できます。

JK:COVIDが長い目で見てどういう結果になるかわからないため:ダイバーはより慎重な(保守的な)ダイビングをし、水中での動きを少なくすべきです。

ARS:ダイバーの身体的状態がCOVID前に戻る必要があります;心臓-呼吸器系を完全に検査することが必須です。

AT:ここシャルムでは、“長期Covid”の症例は診ませんでした。

UvL:私たちが経験した2例の重篤なケースと“長期Covid”のケースに対する勧告は、6ヶ月間はダイビングをせずに、前もって心臓血管系と肺に焦点を絞った潜水医学的検査を受けるというものでした。

JW:現時点でわかっている範囲では、「長期Covid」症候群は、体の中心に生じる体調不良がほとんどであり、自覚症状はあっても他覚症状のない一種の身体症状の出現を示しています。そういうわけで、早期に心理療法を行うことが重要です—リハビリに対する多様な取り組みです!「長期Covid」の患者の中には、身体的後遺症(肺と心臓)がある人がおり、「スイス・フローチャート」に基づく潜水適性検査をパスしないでしょう。

どのような状況だと、Covid-19に罹患したダイバーが主治医に加えて、DANの潜水医学専門医に追加相談をするように勧めますか(メンバーの特典)。

OC:重篤度にかかわらず入院した場合。重篤度にかかわらず慢性の呼吸器疾患の既往がある場合、あるいは、入院歴がある場合もない場合も。Covid-19罹患後症状が残っている場合。

PG:私は実際の(対面での)医学相談がDAN会員の特典の一部だとは思いません。しかし、主治医が実施した、あるいは、指示した医学検査の結果について遠隔で助言を得ることは、疑わしいすべての症例で可能でしょう。

OH:肺の症状がある患者、あるいは、普通のインフルエンザとは思えないような症状のある患者は、感染して12週間後にスパイロメトリと可能ならばHRCT(高分解能CT)を行うべきでしょう。

JK:COVID-19によって呼吸器関係、心臓関係、神経関係のどれかの症状で入院した場合はすべてのケースで。

ARS:必ず行う。

AT:主治医がcovid-19の症例を診察したことがないか、COVID-19がダイビングにどんな影響を持つかについての知識のない場合はすべてのケースで。

UvL:症状のあるCOVID-19に罹患したDAN会員は誰もが、できれば自分の症例についてDANの潜水医学専門医に相談すべきでしょう。

JW:COVID-19感染症に罹患して、ダイビングを再開しようと望む人は、潜水医学専門医に連絡して診てもらって意見をもらうべきでしょう。スイスでは、私たちの地域をカバーする有能な潜水医学専門医のネットワークがありますので、DANの潜水医学専門医に追加で相談するのは、セカンドオピニオンが必要なときだけになるでしょう。

ダイバーは、ダイビングを再開し始めたら、何に注意や心配をすればよいですか。

OC:すぐ疲れるとか、息切れのような呼吸器系の症状があるかどうか。

PG:ダイビングは次第に負荷が高くなるようにします。間違いなく運動/習慣不足と身体機能の低下の両方があるからです。

OH:運動誘発性の呼吸困難(息切れ)があればさらに検査を行うべきです。

JK:肺の圧外傷のリスクが高まっていること、水中での運動能力に制限があることを認識させること。

ARS:肺の傷害、たとえ軽症の感染であっても。

AT
:息切れ、特に水中で頑張りすぎたとき。また、水中で頑張ってもいないのに息切れがおきるならば、さらに注意が必要!ダイバーは自分の呼吸回数と呼吸ガスの消費に注意すべきです。感染前と比較したCOVID-19から回復した後のダイビング後の疲労度。

UvL:“大がかりな”ダイビングメディカルチェック。ボティプレチスモグラフィ、および、結果/以前の肺の症状次第で、HR-CT。
JW:ダイバーは潜在的な危険を認識していなければなりません。特に圧外傷、酸素中毒、DCIのリスクですが、これらについては本当のリスクはまだ分かっていません。今のところ、リスクが高まるというエビデンスを示す発表は一切ありません。

Covidに罹患したダイバーがワクチンを接種する際に知っておくべきことはありますか。

OC:ワクチン接種が、最終的に存在している後遺症を変化させるとかよくすることはないでしょう。

PG:ワクチン接種は、COVID-19に罹患した人にも勧められます。

OH:ありません。できるだけ速やかにワクチンを接種してください。

JK:COVID-19とワクチン接種の間の期間については標準的な勧告に従ってください。ワクチン接種は防護と伝播を100%保証するわけではないことに注意してください。標準的制限(距離をとる、消毒、マスク)を守ってください。

ARS:COVID後のワクチン接種については、それぞれの国の「保健当局」の指示に従ってください。

AT:私が個人的にアドバイスしておきたいのは、1回目のワクチンを接種するダイバーは2回目の接種が終わるまでダイビングをしないことと、抗体検査まで待つようにということです。‘悪意のない’保菌者になる可能性を最小限にすることで、自分自身と周りの人に対してより安全になります。

UvL:現在のところアドバイスはありません。

JW:ワクチン接種を強く推奨します。というのも、ダイビングは社交的な活動で、そこでは、ウイルスに感染しないために必要な注意事項を厳格に守ることが必ずしも可能ではないからです。

ご自身の経験として、「ベルギー潜水・高圧医学会(SBMHS-BVOOG)」の勧告をアップデートする必要はありますか。

OC:特に提案はありません。

PG:ないですね;あれは少し厳しいかもしれませんが、他のもの(たとえば、カリフォルニア大学・サンディエゴ校(UCSD)ガイドライン)はさらに厳しいです。

JK:今のところ、ないです;さらにデータが必要です。

ARS:あの勧告は現在も有効だと思っています。

AT:新しい情報がどんどん出てきていていますが、フェイクニュースの量もそれに劣らずものすごいです。ですから、SBMHS-BVOOGかDANが3か月ごとに声明を出すといいと思っています。単に、考慮すべき変化があるかどうかを述べるだけでよいのです。コロナウイルスの変異株には最大限注意する必要があります。

UvL:注意事項についてアップデートするだけの確証あるデータはありません。

JW:あります:スイスの医療機関や専門医によるエビデンスでは、入院して酸素療法を行った人には完全回復まで3か月以上かかっていることがわかっています。ですから、ダイビングの再開のための再評価まで6か月待つよう勧めています。肺圧外傷症候群のリスク、酸素中毒、減圧症に関しては、理論的危険性に基づいて(現在のところ、報告されたエビデンスはないので)注意が必要であると、はっきり述べるべきです。ですから、リスク(合併症の確率と重篤度によって決定される)は、今はまだ決定できません。

COVID感染症で肺病変のあったダイバーの評価に関して:SUHMSのワーキンググループは、CTスキャンはダイビングを再開する判定には有用ではないと表明しています。肺病変がある人たちは、治療を受けている間に1度以上CTスキャンを間違いなく受けています。ダイビングの再開に関する結果を評価するために重要なことは機能的能力です。ですから、拡散能の検査を加えることによって肺機能検査を強化する、また、酸素飽和度をモニタリングしながら最大負荷までのエルゴメーター検査を行うように勧めます。また、こうした検査の前後にスパイロメトリを行うことがよいかもしれません。

心事象の評価に関して:勧告された手順を支持します。しかし、潜水医学専門医による再評価の際に、入院期間中の詳細な臨床データ、特に、トロポニンの値と変化およびPro-BNP値を利用できるようにすべきであることに言及しておくべきです。

皆様、本当にありがとうございました!

COVID-19罹患後にダイビングを再開するための医学的な統一見解、” What You Should Know About Diving After Covid-19:Covid-19罹患後のダイビングについて知っておくべきこと“を公表するのに加えて、私たちは、「スイス水中・高圧医学会(SUHMS)」が開発し、2021年1月29日に改定した容易に理解できるdownloadable flow chart of these recommendations:ダウンロードできる勧告フローチャートを公表したことに留意してください。このフローチャートに示されている勧告は、全体的な勧告より少しばかり厳しい(保守的な)ことに留意してください。

Covid-19罹患後のダイビングで知っておくべきこと

原文はこちら:【What You Should Know About Diving After Covid-19】

以下の内容は、DANヨーロッパからの情報で、DANヨーロッパの了解を得て翻訳したものです。
また、この情報は現時点におけるものであり、今後の新しい情報に注意願いますとともに、ダイバーに有益と思われる海外DAN等の情報に接した方は、DAN JAPANまで連絡願います。ダイバーの安全等に係る情報については、極力、翻訳・発信させていただきます。
なお、海外DANの発信する情報には著作権があり、無断で利用することはできませんので、ご注意ください。


2020年5月に、DANヨーロッパは、SARS-COV2すなわちCovid-19ウイルスに感染後にダイビングに復帰するダイバー向けの統一推奨を公表しました。この推奨はDANヨーロッパのCovid-19用「健康声明書」の一部をなしていて、また、アメリカ合衆国のUndersea and Hyperbaric Medical Society (水中・高圧医学会:UHMS)、Belgian Society for Diving and Hyperbaric Medicine (ベルギー潜水・高圧医学会:SBMHS-BVOOG)、および、European Committee for Hyperbaric Medicine and Underwater and Baromedical Society (ヨーロッパ高気圧医学・水中・圧気医学会:ECHM & EUBS)が編集した医学的助言に基づくものでした。カリフルニア大学サンディエゴ校(UCSD)も、レクリエーショナルダイビング、科学ダイビング、コマーシャルダイビング向けの「医学ガイドライン」を出しています。現在、多くの場所で、特に地方でダイビング(#DiveLocal)が再開されるに伴って、Covid-19に罹患したダイバーから、いつから安全にダイビングに復帰できるのだろうか、また、もし考えられるなら、どんな注意をしたらいいのだろうかという質問が私たちのところに寄せられています。ですから、こうした医学的な推奨事項を以下の通りもう一度示せば役に立つだろうと考えました。それに加えて、この疾病に罹患したダイバーを治療・助言したことのある、DANヨーロッパの医師たちの現場での直近の経験を集めました。

ダイビングに復帰するに当たっての医学的推奨事項

ほとんどの場合、上記の医学諮問は、このウイルスの様々な症状や感染リスク、それに、この疾病の重症度を決定すると思われる既知のリスクファクターを論じています。執筆した人たちは、注意深くも、この諮問を作成した時点では科学的データが乏しいことを指摘していますが、臨床論文では、Covid-19に感染すると肺や心臓、中枢神経系、腎臓の機能が非常に悪化するという症例が報告されています。
ダイバーには特に懸念される点があり、それは、肺と心臓に後々まで影響が残ると指摘されている点です。他の重篤なウイルス性肺炎と同様、Covid-19に感染したことのあるダイバーにとっては、完全な形で活動を再開するまでに元の健康体に戻る回復期間が必要で、これは症状の重症度によって違いますが、数週間から数ヶ月かかる可能性があります。

以下はCovid-19罹患後にダイビングに復帰するための統一推奨事項です。

COVID-19の検査で陽性であったが無症状であったダイバーと、症状はあったが入院には至らなかったダイバーへの指示は、最初の推奨事項が2020年の初春に作成されてから、アップデートされていることに注意してください。現状、以下の通りです。また、指示と推奨事項はヨーロッパ諸国の間で少し違っているかもしれないことにも留意してください。各国の推奨事項は、これまでほとんどよくわからなかった心肺疾患に対処するために作成されたもので、国や文化を超えて完全に統一できるものとは思われません。しかし、どれもが、ダイバーたちに注意するように強く促しています。

推奨事項:

・COVID-19の検査で陽性になったが完全に無症状であったダイバーは、検査で陰性になってから少なくとも30日待機し、ダイビング適性クリアランス(承認)を受け、その後ダイビングに戻るべきです。
・COVID-19の症状があったダイバーは、検査で陰性になってから30日間待機し、それに加えて、さらに30日間(合計2ヶ月)無症状を続けてから潜水医学専門医によるダイビング適性クリアランスを受けるようにすべきです。
・COVID-19で入院した、あるいは、それに関係した肺の症状で入院したダイバーは、潜水医学専門医が行う、あるいは、調整するダイビング適性クリアランスを受けるのに少なくとも3ヶ月待機すべきです。このクリアランスには完全な肺機能検査(少なくともFVC, FEV1, PEF25-50-75, RVおよびFEV1/FVC)と 末梢の酸素飽和度測定下での運動負荷試験、それに、高解像度CTスキャンで肺が正常に戻っているかの検査が含まれます。
・COVID-19で入院した、あるいは、COVID-19関連の心臓のトラブルで入院したダイバーは、潜水医学専門医が行う、あるいは、調整するダイビング適性クリアランスを受けるのに少なくとも3ヶ月待機すべきです。このクリアランスには、心エコーおよび運動負荷試験(運動時心エコー)を含む心臓の検査で正常の心機能であることを確認するべきです。

こうした肺と心臓の検査は、潜水医学の専門知識を持った医師に判断・確認してもらうべきです。DANヨーロッパのメンバーは、メンバーシップの特典の一部としてDANヨーロッパダイビングサポートネットワークからダイビング医学専門医によるリモート医学相談を受けることができます。

また、スイス水中・高圧医学会(SUHMS)が作成した、わかりやすいこれらの推奨事項のこれらの推奨事項のフローチャート・ダウンロード版もあります。これは、2021年1月29日に改訂されたものです。このSUHMSの推奨は、少し厳しいことに留意してください。

知っておくべき他のリスク因子

COVID-19感染症に罹患したダイバーにはさらに潜在的な他のリスクがあるかもしれません。肺の圧外傷や肺の気泡短絡(シャント)、心臓やその他のトラブルの高いリスクがあるかどうか判断する最もよい方法は、推奨される潜水医学的検査を受けることです。リスクが高いおそれのあるダイバーは、ダイビング活動を再開するにあたって、担当の潜水専門医に診てもらって次のことを考慮するとよいでしょう。

肺過膨張症候群(肺圧外傷):

重篤な肺の症状が出たダイバーは肺の損傷が長期にわたるかもしれませんし、生涯治らないかもしれないことに留意してください。たとえ、肺機能が(ほぼ)以前と同じに見えた場合でもそうしたおそれがあります。この損傷のために肺圧外傷のリスクが高くなるかもしれません。たとえ、ダイビングで急浮上や制御できない浮上がなかった場合でもそのリスクが高くなるかもしれません。(参考:Belgian Society for Diving and Hyperbaric Medicine:ベルギー潜水・高圧医学会)

肺の酸素中毒:

現時点では、肺組織の酸素毒性に対する感受性が高くなる可能性についてほとんどわかっていません;ですから、たとえば、リブリーザーダイビングでPO2が1.3ATA以上の高分圧酸素ガスを長時間呼吸するといったテクニカルダイビングは避けるべきだというのが、賢明な態度といえるでしょう。ダイビングの最も深い水深で、最大PO2が1.4ATAのものを短時間呼吸するだけの単純な“ナイトロックスダイビング”では、問題は生じません。(参考:Belgian Society for Diving and Hyperbaric Medicine)

減圧障害:

COVID-19の肺感染後に、肺の“気泡フィルター”機能が変化する可能性については、まだほとんどわかっていません。変化があるとすると、減圧症のリスクがかなり高くなるかもしれないということになります。ですから、COVID-19の肺の症状が出たダイバーは、一時的に(あるいは、完全に)コンピュータの無減圧限界(NDL)に十分余裕を持たせる範囲でダイビングをするのが賢明な態度だといえるでしょう(ダイビング中のいかなる時にもコンピュータが必須の減圧を表示しないように)(参考:Belgian Society for Diving and Hyperbaric Medicine)

感染拡大を防ぐ:Covid-19 とダイビング

Covid-19を市中から追い出すことはできないでしょうから、人と人との距離が近いとか、個人用の器材を使い回すようにすると、どうしても感染するリスクが生じると考えられます。ダイブセンターやダイブチームは、それぞれが、公表された推奨を使って、リスクを予防し縮小するように検討するべきでしょう。ダイバーとダイブセンターは、ダイビング連盟とDANヨーロッパ並びにDivers Alert Networkが公表しているように、ダイビング器材の消毒のガイドラインをしっかりと守るようにすべきでしょう。

一般的に、以下のことが推奨されます:

ソーシャルディスタンスを引き続き確保すること。ダイビング中(ほとんどがダイビング中に陸上にいる時)も、マスクをつけることや常に安全なソーシャルディスタンスをとるなどの、地元当局の求めるソーシャルディスタンスを引き続き確保します。

個人用とレンタル用の器材を消毒すること。これには緊急酸素器材を含み、カビやバクテリア、胞子、ウイルスなどの広範囲な病原菌をカバーする適切な消毒剤を使います。

個人用の呼吸装置を交換しないようにします。ただし、実際の緊急事態は別です。“呼吸システムのシェア”の練習を計画する場合は、どんな場合も、そのような方法で個人の保護が確実になるようにしてください。

上記の推奨事項を守ることで、ダイバーは感染拡大のリスクを抑えることができますし、また、Covid-19になったダイバーが考えられる最も安全な方法でダイビングを再開することができます。

【Incident Report】耳の圧外傷に気づかずダイビング

耳の痛みを経験したが、初心者ダイバーはダイビングを続けた。

[報告されたケース]

1年半前にダイビングを始めて以来、私はいつも左耳が抜けにくいというトラブルを抱えていました。
私は、唾を飲み込む方法で圧平衡(耳抜き)します。鼻をつまみながら息を吹き込む方法での圧平衡は、経験した25本で1度も上手くいったことはありません。

最近コズメルに旅行した際、私は4日間で7本のダイビングを予定をしていました。初日の1本目は水温が約27-32℃、透明度は約15mでした。
潜降中、圧平衡ができず、水深約6から9mで左耳に数秒から1分間の痛みを感じたため、潜降を中止して担当のダイブマスターに耳の痛みを伝えました。少し浮上した後、唾を飲んで耳の圧平衡をし、痛みがなくなったので潜降を続けました。

水深約15mで、同様の耳の痛みを再度感じました。そこで、再度潜降を停止し、浮上した後に圧平衡を試みました。すると、突然左耳で大きな「爆発音」がして、強い痛み、めまい、吐き気が1分ほど続きました。この状態は、症状が発生した時と同様に突然収まり、その後はトラブルなくダイビングを終了しました。

2本目のダイビング後、ひどくふらふらする感じが始まり、翌日まで続きました。その後3日間は、読書する時に目のかすみもありました。数日間は、左耳に時々軽い痛みがあり、ひどく酔っているような感覚がありました。

1本目のダイビングの直後、私は担当ダイブマスターに圧平衡が困難なことや、経験した症状について話しました。でも、しばらくダイビングを控えた方が良いのではないか、と私に勧める人は誰もいませんでした。このため、他に問題が見当たらなかったので、予定通りダイビングを続けました。しかし、左耳の軽い痛みは、旅行の終わりまで残りました。

飛行機搭乗に問題がないことを確認するため、帰国前に医師に受診することにしました。
医師は左耳に中耳圧外傷があり、細菌に感染しているが、耳から分泌液は出ていないと診断しました。私はコルチコステロイド*1を1回投与され、5日分の抗生物質・痛み止めのアドビル錠*2・鼻の充血除去の錠剤と鼻腔用スプレーを処方されました。

帰国後、耳の中で爆発のような音がした16日に、潜水医学に詳しい医師に診てもらいました。医師は、鼓膜の奥(訳注:中耳)に出血が確認できるが、耳の炎症は完治していると言っていました。でも、耳はまだ炎症が起きやすい状態でした。

6週間後、再度医師に受診したところ、耳は完治し、もう圧外傷はないと診断されました。耳の検査を行った後、ダイビングの再開許可がおりました。

それ以降、冷水中で水深約8mから20mのダイビングを14本経験しました。でも、深刻な耳関連のトラブルは、発生していません。圧平衡には少々問題がありますが、今までも圧平衡には常に問題があったのです。

*1 訳注:副腎皮質ステロイド。アレルギー反応、炎症および免疫反応に対する抑制作用がある。
*2 訳注:アメリカ市販薬(日本未承認)

[専門家からのコメント]

中耳の圧平衡に関するトラブルは頻繁に発生し、最終的には圧外傷になる恐れがあります。耳の圧外傷は、ダイビングで最も頻繁に起こる傷害です。

圧外傷の症状は様々です。このダイバーが説明しているように、大きな音がするのはまれですが、より一般的なのは、耳の痛みとめまいです。ダイバーならば、圧外傷の症状の知識を持っているべきですし、症状を無視してはいけません。耳に何らかの違和感があれば、ダイビングを控えるべきでしょう。航空機搭乗やダイビングの後、数日間にわたって軽い耳の痛みや音が聞こえにくい状態が続くようなら、医師を受診するべきです。

重症の圧外傷は、直ちに対処が必要な場合があります。航空機搭乗やダイビングの直後に、めまいや回転しているような感覚があるなら、まれに耳の緊急手術を要する場合がありますので、すぐに医師に診てもらわなくてはなりません。

痛みがひどく、耳から血液や体液が漏出している場合、鼓膜に穴が開いている可能性があります。そのため、発症から数日以内に医師の初診が必要です。

– Petar Denoble, M.D., D.Sc.

【Medical FAQ/医療相談】リウマチの既往症があるゲスト

◆相談内容◆

質問者:インストラクター

関節リウマチの持病があるお客様から、ファンダイビングへのお申込みがありました。
ダイビングの可否判断、可能な場合にはどのような診断書が必要か、アドバイスを頂ければと思います。

【ゲスト情報:30代・女性 潜水本数:30本】
約7年前に関節リウマチを発症(現在、関節に痛みはほぼない)
服薬している薬は4種類:
・メトトレキサート
・ケアラム
・フォリアミン
・タケプロン
8週間に1度通院し、点滴(レミケード)をしている。

◆医師からの回答◆

【関節リウマチとは?】
免疫の異常により関節の腫れや痛みを起こし、そののち関節破壊が生じて変形をきたす病気です。
主に手足の関節で起こりますが、内臓を侵すこともあります。最近では関節破壊予防のために初期の治療が重要と言われています。薬物療法が主となり、 生物学的製剤(レミケード)、免疫抑制剤(メソトレキサート)はよく用いられます。ケアラムも抗リウマチ薬です。フォリアミン(葉酸)は副作用予防に投与されていると考えます。
関節リウマチの方の潜水可否については、主治医と相談が必要です。 

【主治医と相談する際のポイント】
1.ダイビングには一定の身体能力が必要
穏やかな海況での潜水は別ですが、荒れた海況での潜水・約20kgの器材の運搬/装脱着・バディの不慮の事態への対応では、高い身体能力が求められます。
また、関節痛のある中で潜水し症状が悪化した際には、「リウマチの悪化」か「減圧障害を発症した」のか診断に苦慮することもあります。今回の相談内容(関節痛ほぼなし)を見る限りは、関節破壊は少ないように見受けられますが、運動適性について主治医と相談することが良いでしょう。

2.内蔵の問題
リウマチの薬物治療は、生物学的製剤、免疫抑制剤等の登場で飛躍的に進歩しました。一方で、これらの薬には副作用もあります。肝臓障害、胃腸障害などいろいろな副作用が起こり得ますが、中でも潜水に大きな問題を及ぼすのは間質性肺炎です。なお、間質性肺炎については薬の副作用として生じることもありますし、関節リウマチの合併症として生じることもあります。
空咳などを伴うこともありますが、自覚症状があまり出ず気づかれないこともあります。間質性肺炎では減圧障害のひとつである動脈ガス塞栓症のリスクが高まります。この点も主治医に相談する必要があります。潜水では正常な肺機能が保たれていることが必要なので、呼吸機能検査を受けて肺活量80%以上、1秒率70%以上が保たれているか調べることを考慮しても良いでしょう。

3.その他
メトソレキサート内服では、皮膚が日光に過敏となる方もいます。
また、メソトレキサート、生物学的製剤は共に免疫抑制作用を要しており、注意すべき副作用として重度感染症があります。潜水時にちょっとした怪我はつきものですし、海水を誤嚥することもあり、感染に関する一定のリスクを潜水は内在しています。

【ダイビングの可否判断について】
ご質問の「ダイビング可否判断」は、医療相談では困難です。
全くダイビングに適さない、という病気などをお持ちの場合にはダイビングはできない、とお伝えすることが可能ですが、今回のような案件では上記のポイントを考慮に入れ、最終的にはご本人が主治医と相談の上、判断を仰ぐこととなります。このため、こちらの回答を参考に主治医に相談いただくことをお勧め致します。

また、ダイビングサービス側が、病気をお持ちのゲストの受け入れに関するリスク評価の判断材料として「医師からの診断書」が重要です。ただ、いわゆる一般的な「診断書」ではダイビングのリスクは判定しにくい為、DAN JAPANでは「メディカルチェック」という書式を作成しています。PDFファイルおよび使用の手順等がDAN JAPANサイト(下記URL参照)に記載されていますので、ご確認の上利用されるのも良いかと思います。ダイビングに詳しくない医師も多いので、受診の際には医師用の「メディカルチェックガイドライン」も持参するようゲストの方にお伝えください。

診断書やこのメディカルチェックは、言ってみれば車検証のようなもので、現在の身体の状況を医師が評価するものであり、未来にわたり確実に疾病が出ない、という保証書ではないことに留意してください。

《参考文献または参考元》
公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センター
DAN JAPAN DANメディカルチェック/DANメディカルチェックガイドライン

-DAN JAPANメディカルチーム