【Medical FAQ/医療相談】喘息発症後のダイビングについて

◆相談内容◆

1週間ほど前から咳が止まらず、病院で受診したところ、10年ぶりくらいに喘息を発症したことがわかりました。今まではまったく発作なども起きなかったのですが、喘息が誘発されるような環境にいたため、発症したのだと思います。現在、アドエア250ディスカス60吸入用を服用しています。

受診先の病院では、今週のダイビングは休んだ方が良いとのことでした。しかし、来週にもダイビングを予定しているので、可能であれば潜りたいと考えています。

◆医師からの回答◆

残念ですが、主治医の言うように、現状でのダイビングは勧められません。
喘息は、圧外傷のリスクがあり、かつてはダイビング禁忌とされてきました。その後の学会での議論を経て、最近ではコントロール良好な場合は、リスクを説明したうえでダイビングを許可する傾向にはあると考えます。
コントロールされていない状態とは、以下などがあげられます。
1. 気管支拡張剤を使用している。
2. 肺機能検査に異常がある。
3. 早朝のピークフロー値が予測値の80%未満のことがある(一定期間の測定において)
4. 運動誘発試験が陽性

本件では、喘息を発症した直後であるために 3 を満たしていないでしょうし、テオロング、アドエア250ディスカス60吸入用などは気管支拡張薬です。よって、まずは喘息の治療に専念し、コントロール良好になった時点で、改めてダイビング可否を評価することが良いと考えます。

また、DANJAPANのDDNETの先生には、喘息に詳しいドクターもおられますので、ダイビングを再開される際には、受診されることもお勧めします。
なお、専門医師の先生につきましては、DAN JAPANホームページのDDNETより確認することができますので、参考になさってください。
▶DDNET:https://www.danjapan.gr.jp/service/medical/sddnet

※DDNET医師は、ボランティアにより運営される医師のネットワークです。受入が可能かどうか、事前に確認のうえ受診ください。

―DAN JAPANメディカルチーム

【Incident Report】シャワー後に現れた 一過性の神経症状を伴った皮膚減圧症

熱いシャワーの後、目のかすみと軽いめまい(ふらつき感)を伴って
発疹とみみずばれが身体に現れた

[報告されたケース]
私はアドバンスダイバーで、200本以上のダイビング経験があります。
メキシコでの休暇中、4日間で計9本のダイビングをしました。全てのダイビングで圧縮空気を使用し、適切な安全停止を実施しました。さらに、同じ日に複数のダイビングをする場合、少なくとも1時間の水面休息をとりました。ダイビングコンピューターを使用して潜水を計画しました。

◆1日目◆
1本目:最大水深 18m、潜水時間 45分、安全停止 5分
2本目:水深記録なし、潜水時間 40分、安全停止 5分

◆2日目◆
1本目:最大水深 21m、潜水時間 46分、安全停止 5分(水面休息時間1時間)
2本目:最大水深 15m、潜水時間 50分、安全停止 3分

◆3日目◆
1本目:最大水深 20m、潜水時間 45分、安全停止 5分
2本目:最大水深 15m、潜水時間 50分、安全停止 3分
※2本目の後、かゆみを感じたが、シャワーを浴びたら消えたように思ったので、無視した。

◆4日目◆
1本目:最大水深 24m、潜水時間 40分、安全停止 5分(水面休息時間65分)
2本目:最大水深 10m、潜水時間 55分、安全停止 3分(ホテルに戻り昼食)
3本目:最大水深 5m、潜水時間 54分、安全停止なし(ビーチダイビング)

4日目の最終ダイビングの約3時間後、宿泊先に戻りシャワーを浴びている最中に、皮膚がひどくかゆくなりました。かゆみは悪化し続け、おしりに近い腰と右胸に痛みも出てきました。視界がぼやけ、軽いめまい(ふらつき感)がありましたが、夕食後には落ち着きました。そして、皮膚に赤いシミのような発疹と、みみずばれがあることに気づきました(写真1)。

【写真1】

DANの緊急ホットラインに電話したところ、宿泊先から近い医師を紹介されました。
医師は私の症状を診察し、皮膚減圧症(DCS)、すなわちスキン・ベンズと診断しました。医師からは、窒素は身体の脂肪のある部位に行く傾向があると説明されました。そうだとすると、おしりに近い腰と右胸に痛みがある理由が説明できます。翌日、経過観察のために再診するよう指示されました。

痛みと発疹は、診断を受けた次の日に消えました。医師からは「今回の旅行中のダイビングは禁止」と強く指示されました。休暇から帰り、いくらかヒリヒリ感がありましたが、それは高度変化によるものだと考えました。DANは私に必要なサポートを全て提供してくれたうえに、治療費はダイビング事故保険で補償されました。DANの会員でなかったらどうなっていたか、想像もつきません。

[専門家からのコメント]
今回報告された症状、徴候の出現や進行の状況は、珍しいケースではありません。このダイバーの経験は、他のダイバーによって報告されたものとほぼ同じです。皮膚に症状が出た症例の20%近くで、神経症状-例えば、目がぼやける、めまい(ふらつき感)、意識混乱など-が付随することを知っておくことは重要です。神経症状の中にはわかりにくいものがあるため、明白な神経症状がある/なしに係わらず、必ずダイビングに詳しい医師への受診を推奨します。

通常、皮膚に症状が出た症例では、まず常圧下の酸素を投与します。神経症状が現れている場合、医師は再圧治療を選択する可能性があります。

一生に1回しか皮膚減圧症を経験しないダイバーもいますし、何度も不規則に症状を経験するダイバーもいます。皮膚減圧症の症状が出現する理由も、正確な発症メカニズムもはっきりとはわかっていません。しかし、このダイバーが説明を受けたように、一般的に影響を受ける部位は脂肪組織のある部位に多い傾向があります。最初、かゆみが出て、大体、写真のように皮膚が斑点または擦り傷のように見えるような状態になります。しかしほとんどの場合、かゆみと斑点は皮膚減圧症以外の原因によるものである、と診断されてしまいます。

減圧症ではない一般的な皮膚反応や発疹は、上記とは異なった形で現れます。その違いを区別できることは、非常に重要です。
このダイバーが説明しているように、表面だけではなく皮膚のより深いところでも痛みやヒリヒリ感があります。ヒリヒリ感は、筋肉を酷使した時の痛みに似ている、と表現される場合もあります。この深部のヒリヒリ感は、一般的な発疹と皮膚減圧症とを区別するのに役立つ方法の1つです。

もし皮膚減圧症が疑われる場合には、ダイビングを中止し、可能であれば医師の診察を受けてください。適切な応急手当は陸上で酸素を吸うことですが、神経検査もなるべく早くに受けてください。
症状が出た場合、その旅行期間中はそれ以上ダイビングをしないことを推奨します。もしも危険性を知りながらもダイビングを続ける、と決めたならば、すべての斑点とヒリヒリ感が完全に解消するまでは待つ必要があります。完全に解消する前にダイビングを行うと症状がぶり返し、症状が悪化する可能性が高くなります。

もし、あなたが皮膚減圧症を何度も経験するような珍しい人であれば、潜在的な問題があるかどうか検査することを推奨します。DANでは、担当医と共に検査方法を検討することも可能です。

– Marty McCafferty, EMT-P, DMT

【医療関連情報】ダイビングと糖尿病(ガイドライン)

レクリエーショナルダイバーのためのガイドライン
ダイビングと糖尿病

DANは、高気圧関連学会においてワークショップを実施し、エキスパートに意見を求めた上でガイドラインを策定しています。

多くの場合、非医療従事者にはガイドラインは理解するのが困難なため、より多くのダイバーに情報を広く届ける目的で、インフォグラフィックを作成しています。

今回は、「ダイビングと糖尿病」をご紹介します。
(なお、英語版のインフォグラフィックはここからダウンロードできます。)

↑イラストをクリックでダウンロード
「レクリエーショナルダイバーのためのガイドラインダイビングと糖尿病」

↑イラストをクリックでダウンロード
DAN:Guidelines for Recreational Diving with Diabetes – Summary Form

 

【Medical FAQ/医療相談】降圧剤を服用してのダイビング

◆相談内容◆

質問者:男性・50歳(インストラクター)

インストラクターです。主治医がダイビングに詳しくないため、DANに相談することにしました。

最近、高血圧予防の為、薬を服用するよう医師から指示されました。
「ミカムロ配合錠AP」という薬を朝食後に一錠飲んでいます。ダイビングを行って身体に影響ないか心配していますが大丈夫でしょうか。

◆医師からの回答◆

高血圧は心臓に負荷をかけ、結果として心不全、虚血性心疾患を引き起こす可能性(リスク)があります。ダイビング中には血圧が上昇しやすいため、血圧コントロールが求められます。また、心疾患はダイビング事故の死亡原因の13%を占めるというデータもあります。降圧剤には様々な種類があり、「ミカムロ配合錠剤AP」はカルシウム拮抗剤とアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)の合剤です。
http://med2.astellas.jp/corp/basic/details/mca/expmed/dip-mca-ap.pdf

降圧剤とダイビングの関連について、多くの情報はありませんが、以下の文献に記載がありますので参考にして下さい。
http://npominder.justhpbs.jp/newpage15_4.html

上の文献にもあるように、「ミカムロ配合錠剤AP」は比較的問題の少ない薬剤と思われます。
ただし、副作用の出現には個人差があるので、最近投薬を開始したのであれば、しばらく(例えば1カ月くらいは)内服を継続し、様子を見た上で(副作用の出現が無い事を確認した上で)ダイビングを行うことが良いと考えます。
薬の説明文にもあるように(1番目のリンク先参照)、ミカムロ配合錠剤APにも、呼吸器系の問題などが生じることがあります。

なお、DAN JAPANのガイドラインでは、「コントロールされた高血圧」は相対的に危険な状況(比較的危険性は低い)とされています。

DAN JAPANでは40歳以上のダイビング希望者について、冠動脈疾患の有無の検査(運動負荷試験等)をすることを推奨しています。質問者の運動能力(運動習慣)はいかがでしょうか。文献(2番目のリンク先参照)にもあるように、ダイビングには一定の運動能力が必要です。

このような状況を主治医とよく相談しながら、より安全な身体状態でダイビングに臨むことを期待します。

追記:
主治医がダイビングに詳しくないとのことですが、循環器の医師であれば、患者から通常の運動に関する相談を受けることは多いと思います。
ダイビング中は、
1. 血圧が上昇しがちなこと
2. 体の中心に血液が集まるので心臓の負荷が増加すること
3. 水中での虚血性心疾患発症は死亡事故につながりやすこと

を説明したうえで、アドバイスをもらうことが良いのではないかと思います。

―DAN JAPANメディカルチーム

【お知らせ】Alert Diver Monthly Year Book 2017 創刊‼

ダイビングの安全情報を満載
Alert Diver Monthlyの2017年分が一冊の本に

2017年1月より、新たに創刊したDAN JAPAN会報誌「Alert Diver Monthly」。
以前は年3回の印刷物として会員の皆様にお届けしていた「Alert Diver」が、Web上で閲覧する年10回の情報誌になりました。

Web上で閲覧する会報誌は、拡大・縮小が可能でフルカラー、様々なデバイスで読めるため多くの会員様から好評を頂いています。しかしその反面、「お店に置いてゲストに読んでもらえなくなってしまった」「書き込みや付箋が付けれないので、印刷物を希望します」などのご意見も頂戴していました。

このため、Web上のAlert Diver Monthlyアーカイブはそのままに、2017年に発行したVol.1~Vol.10を取り纏めて「Year Book 2017」を創刊することとなりました。

DAN JAPAN会員も、非会員も手にできる
正確で最新な情報を発信

DAN JAPANの目標は「全てのダイバーのレベルアップ」です。
全てのダイバーが正しい知識を持ち、安全に気を付けて潜る事により、多くの事故は未然に防ぐことが可能であると考えています。このため、現在は様々なツールを使用して安全情報を発信しています。

しかし、「Alert Diver Monthly」は会報誌であり、会員専用ページに掲載されているため、非会員の方は読むことができませんでした。
現在、2018年分の会報誌は会員様しか読めませんが、2017年分を冊子として頒布することでより多くの方に情報を提供できると考えています。
(有効なDAN JAPAN会員は「MyDAN」にログインし、2018年分を含む全ての号を閲覧できます。)

DAN JAPANホームページ「DAN Store」内で有料頒布
現在送料無料キャンペーンを実施中

購入は、DAN JAPANホームページの「DAN Store」で受付けています。(今回、初めての試みとなるため、ご入金の確認後、発送は1~2週間程度お時間を頂く形となっておりますので、ご了承ください。)

2019年4月5日(金)〜7日(日)に東京・池袋にて開催されたマリンダイビングフェア2019にて先行販売を開始し、すでにご予約をいただきました会員様もいらっしゃいます。
現在、「創刊記念」として送料無料キャンペーンを実施していますので、ご購入希望の方はお早めに!
▶過去タイトルはこちら:Year Book 2017タイトル一覧
▶ご購入はこちら:DAN Store

価格(税込)
▶DAN JAPAN会員:2,800円
▶一般(非会員):3,200円
▶送料:無料(キャンペーン実施中)

お問合せ先:DAN JAPAN事務局
✉ info@danjapan.gr.jp
☎045-228-3066(平日9時~17時)
担当/白石(しらいし)

【Incident Report】水中での吐き気

ダイバーが水中で吐き気を覚えて浮上
吐き気の原因は不明だった

[報告されたケース]

ダイバー数人が、いつも潜っているダイビングポイントで、水深40mへのディープダイビングをしていました。潜降中、水深25m付近で女性ダイバーが吐き気を覚え、一旦停止しました。彼女はバディに不調を伝え、ダイビングを中止することにし、10分以上かけて2人で浮上しました。他のダイバーには状況を伝えず浮上したため、他のダイバー達はそのままダイビングを続けました。

ボートでは、吐き気を訴えるダイバーに対して、症状緩和のためにスタッフが準備した酸素を供給しました。グループの他のダイバーはボートに呼び戻されることなく、20分以上経過してからダイビングを終了しました。全員がダイビングを終了しボートに戻った後、ボートは岸に向かって移動を開始しました。移動中、水中に魚の大群と遭遇したため、数人のダイバーはスノーケリングして魚を見たいとリクエストしました。船のキャプテンは、ダイバーの吐き気が改善しておらず酸素を供給しているので、短時間だけとの条件を付けて船を止めました。5分後、ボートは再び海岸に向かって移動を開始しました。

吐き気のあるダイバーは安静を指示され、港で様子をみていましたが、30分経過しても症状が改善しないため医療機関に搬送されることになりました。24時間経過を観察しましたが、身体状況は良好で治療の必要はないと診断され、退院しました。結果として、吐き気の原因は不明でした。タンク内の空気を分析しましたが汚染物質は検出されず、レギュレーターも検査しましたが問題はありませんでした。このケースでは、ダイバーは船酔いはしておらず、吐き気以外の症状もありませんでした。

[専門家からのコメント]

症状が出てすぐにダイビングを中止したことで、ダイバーとバディは安全に浮上し、すぐに症状について医学的な評価をすることができました。ボート上での酸素供給のタイミングも良かったと考えられます。しかし、ダイバーを岸に運び、医療機関へ搬送するまでに若干の遅れがありました。診察は、できるだけ早く受けるのが理想です。このケースのダイバーの症状は、船酔いやダイブプロフィールなどの明確な原因がない吐き気でした。ダイビングとは無関係な健康上の問題が疑われますが、それでもできるだけ早く診察を受けるにこしたことはありません。

タンク内の空気の分析は、汚染が症状の原因ではないことを確認するうえで役に立ちました。また、ダイバーの症状は悪化せず、治療の必要なく改善しました。今回のケースでは、吐き気の原因が不明なため、ダイビングを再開する前に健康診断を受けること、また、再度同様の症状が現れないことを確認しながらダイビングすることをお奨めします。

– Brittany Trout

【Medical FAQ/医療相談】外傷性気胸後のダイビング

◆相談内容◆

質問者:男性・46歳

約1年前に交通事故で外傷性気胸になりました。その後順調に回復し、現在服薬なし、スポーツ(サイクリング、ランニングなど)も楽しんでおり、生活に支障はありません。

先日、体験ダイビングに申し込もうと思ったところ、問診票に「気胸の既往歴がある場合には、医師への相談が必要」と記載がありました。
ウェブなどで自分なりに調べたところ、「自然気胸」はダイビングで禁忌となっていましたが、「外傷性気胸とダイビング」に関する記述を見つけることが出来ませんでした。
主治医に相談したところ、「CTで検査しても問題はなさそうなので大丈夫ではないか?」と言われています。

外傷性気胸の既往歴がある場合、今後もずっとダイビングは出来ないのでしょうか?
今回は体験ダイビングで浅いところに潜るだけなので、その位であれば安全なのではないかと考えています。

医師からの回答

【気胸とは】
何らかの原因で胸膜に穴が開いて、胸膜腔に空気がたまり、肺が縮んだ状態です。
原因は様々で、原因によりダイビング適性に対する考え方も変わります。
自然気胸は再発率が高いこと、水中での再発は危険であることから、ダイビング適性は無いと捉えられています。肺疾患(喘息、肺気腫等)に合併した気胸も、もとの疾患が治っていない以上、再発しやすいと判断するため、同様にダイビング適性が無いと判断されます。

【外傷性気胸とダイビング】
一方、外傷性気胸は治癒していれば、必ずしも危険性は高くないと考えられています。
DANJAPANガイドライン

外傷性気胸は胸部鈍的外傷、鋭的外傷によって生じます。前者は肋骨骨折を伴うこともあり、後者は刺し傷、銃創などで生じます。治療は重症度によりますが、胸腔ドレーン(註;空気を抜くチューブ)を挿入しながら、損傷した胸膜が自然治癒することを待つことが多いと思います(保存治療)。

治癒の判定は、基本的には臨床経過からの判断となり、ドレーン挿入をしながら損傷胸膜治癒(瘢痕形成)を待つ→呼吸での漏れが無いことを確認する、でとどまることが多いです。

治癒後のダイビングに対するリスクですが、可能性でいえば、瘢痕性に治癒した胸膜は健常組織より破れやすい、すなわち水中で再発する可能性がゼロとは言えないと思います。ただし、証明することはできない小さいリスクであると考えます。

ただし、外傷性気胸で肺組織そのものが大きく損傷されている場合があり、その場合は別に考える必要があります(特に鋭的外傷)。
肺損傷の程度によってはダイビング実施前に肺機能検査も望ましいと考えますし、それ以前に、例えば、レントゲンで分かるほどの肺損傷(瘢痕)が残っている場合、ダイビング中の圧外傷発症のリスクがあり、ダイビングは勧めにくいと思います。

「その後順調に回復し、服薬なし、スポーツ(サイクリング、ランニングなど)も問題なし。CTで検査しても問題はない」との質問者からの情報からは、問題となるような肺損傷は無いのではとは推察していますが、主治医に確認してみてください。

上記を簡潔にまとめるのであれば、外傷性気胸後のダイビングにあたって、
1. 破れた胸膜が自然に治癒した部分は特にダイビングで問題となることはないだろう。
2. 肺損傷がひどいと、ダイビングで圧外傷をきたしやすくなるので問題となる。

となるかと思います。

なお、今回体験ダイビングの予定なので危険は少ない、とのことですが、肺の圧外傷はむしろ浅い水深で発症しやすいので、注意して潜られることをお勧めします。

【事務局より】

ケースバイケースでリスクをどのように捉えるか、が判断基準の1つとなるかと思います。
この相談は一般的な回答となりますので、上記を主治医に伝え、判断を仰ぐことをお勧め致します。

なお、体験ダイビングで行う浅場でのダイビングは、確かに一見リスクが小さいように感じるかもしれませんが、「肺の過膨張傷害」というダイビング特有の傷害という観点からは、深場でのダイビングより相対的なリスクが大きいです。
特に気胸を発症した後のダイビングでは、医師のアドバイスのように胸膜が健常組織よりも破れやすいという可能性がありますので、息を止めないようにすることで肺の内圧を高めないようにし、予防に努めることをお勧めします。

―DAN JAPANメディカルチーム