【Incident Report】皮膚の発疹を見逃すべきではない

【Incident Report】皮膚の発疹を見逃すべきではない

ダイバーは皮膚減圧症(DCS)を発症していたが、気付いていなかった。
その後症状は自然に消失した。《2012年トリニダード・トバゴ》

[報告されたケース]

58歳女性ダイバー(身長180cm/体重75kg)がトリニダード・トバゴにダイビング旅行に行き、毎日複数回のダイビングを6日間連続で行いました。最大深度は全て水深24m以下のダイビングでした。
4日目に、ダイバーは体幹部分の皮膚の発疹に気づきました。原因がわからず、炎症用のAleve*を飲みましたが改善は認められませんでした。その後もダイビングを続けましたが、水中では「皮膚の発疹」が改善することに気づきました。
体幹部分の発疹は、6日目の最終ダイビング後、帰国飛行機搭乗前の時点では消えていました。飛行機の搭乗中については、特に何も報告はありませんでした。
*Aleve=アリーブ/アメリカ市販薬。ナプロキセン系の解熱・鎮痛剤

カナダに帰国後、「ダイビング後のしみのような皮膚の発疹」をネット検索したところ、一番最初に検索に上がってきたのは「皮膚減圧症」でした。この時点でDANに連絡し、紹介された医師の診断を受けるよう指示されました。

帰宅して2日後、最終ダイビングから3日後の診察では、症状はでておらず、身体所見も報告されませんでした。また、神経学的な観点でも損傷は受けておらず、関連する所見も報告されていません。

[専門家からのコメント]

皮膚減圧症は一般的ではなく、多くのダイバーは減圧症(DCS)の症状が皮膚に出現することを知りません。皮膚症状だけなら治療が必要ない可能性もあります。しかし、ダイバーが気付いていない神経症状(知覚障害、痛み、しびれなど)の可能性を除外するために、医学的な評価が必要です。

皮膚減圧症(DCS)は、「チョークス」と呼ばれる、呼吸困難と咳き込みを伴うことがあります。このようなケースでは、神経症状が存在する可能性が高くなります。しかし、神経症状はチョークスを伴わずに存在する可能性もあります。チョークス及び神経症状が出ているダイバーを救急病院に搬送する間は、応急処置として大気圧下での酸素投与をするべきです。

このケースでは、症状は自然に消えました。とはいえ、皮膚発疹が出ているのにダイビングを続けることは勧められません。皮膚の発疹のあるダイバーは、神経症状があるか診察してもらうべきでしょう。

– Petar Denoble, M.D., D.Sc.

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