【Incident Report】予期せぬ単独潜水

【Incident Report】予期せぬ単独潜水

流れでバディと離ればなれに。
初めてのバディと一緒に潜る時には事前にトラブルの際の対応について確認を。

[報告されたケース]

私のバディはその日のダイビングには参加しなかったため、一緒に潜ったことのない人と初めてバディを組むことになりました。バディとなったダイバーは経験豊富だったので私は何も心配していませんでした。

ところが、潜降時に強い流れがあり、私は一緒に潜ったグループの人と離れ離れになってしまいました。バディと私は約15m程の距離で、離れ離れになり、お互いを見ることができる位置でしたが、彼は私をおいてグループの他のメンバーとダイビングを続けました。私は潜降すれば全員に会えると考えたのですが、強い流れで着いたところはバディやグループと違う場所でした。

太平洋の真っただなか、水深29mに自分ひとりで、周囲には誰もいない。私はパニック状態になり、すぐに浮上して水面に行かなければいけない、と思いました。幸いなことに自分の経験とトレーニングから何をすればよいかは判っていたので、急浮上はしませんでした。

まずパニックの状態から意識を気を落ち着かせて、自分自身に「私ならこの状態から抜け出せるはずだ」と言い聞かせました。私は水深30m以深に潜った経験があり、ディープダイビングが好きですが、慣れない水域で突然ひとりになることは恐ろしかったです。

速度をコントロールしてゆっくりとした浮上をし、忘れずに水深4.5m付近で安全停止をしてから水面に浮上し、ダイビングボートに手を振って拾ってもらいました。

ボートに上がり、器材を降ろした約30分後、担当のダイブマスターが大丈夫かどうかを確認しにきました。そして、2本目のダイビングをしたいか、と質問されたのですが、私の状態の確認がかなり時間が経過してからだったこと、そして、この状態で再度潜るかと聞かれたことに本当に驚きました。私は、すでに水深29mまで潜り、水面休息をしなくてはならないので潜れない、と伝えました。

ボート上で、バディからは私が水中でトラブルに陥っており、浮上しようとしているように見えたから、自分はダイビングを続けることにした、と言ってきました。私は、「バディがトラブルに陥っていると感じたとしたら水中で離れて1人になるべきではない。もしもあなたが単独ダイビングを続け、トラブルに陥ってもバディとして手助け出来ないから」と説明しました。

私は、その日初心者ダイバーと潜っていたダイブマスターの責任者にこの件を報告しました。すると、今後私と今回のダイブマスター、およびバディと一緒に潜らないようにすると言いました。

今回のインシデントはその日だけでは終わりませんでした。次の日、同じダイブマスター/バディと一緒に潜った、経験豊富なダイバーが同じ状況になりました。幸い何も問題はなかったのですが、大きな事故になる可能性がありました。私はこの出来事は教訓で、緊急事態で自分の経験とトレーニングが使えるということを学んだと考えています。

[専門家からのコメント]

バディダイビングは、しっかりと実施されれば安全性を向上させる重要な手段となります。
バディダイビングの手順は、エントリー前の陸上/ボート上から開始します。一緒にダイビング計画を立て、水深・潜水時間・残圧の管理方法など、重要な項目を話し合ってください。また、バディのどちらか、もしくは2人共が写真や何かを収集するなど、何らかの水中活動を計画しているのであればそれを伝え、目的に応じたダイビング計画をたてなくてはなりません。もし同意できなければ、バディを解消して別に同じ目的を持つバディを見つけるのが良いでしょう。

ダイビング前にはバディチェックを実施し、互いの器材の配置と機能を確認して下さい。また、ハンドシグナルを確認し、誤解が生じないようにするのも良いと思います。

ダイビング中ずっとバディ同士が手に届くところにいるということも、良いダイビングの条件に含まれます。遠くからお互いが見える、というだけでは安全の確保はできず、トラブルが起きたり緊急事態が生じたりしたらバディは素早く手が届く必要があります。バディはお互いを頼ることが出来なくてはいけませんが、相手やダイブマスターを全面的にあてにしてダイビングを終えるようではいけません。自分の安全について、各ダイバーに最終的な責任があります。

安全に関するダイビングの習慣は、ダイバーが危険な状況に対して率直に意見を言うことで改善されます。トラブルや、トラブルが起きそうな状況を仲間のダイバーに注意喚起することでダイビングの安全性が向上し、それ以降のトラブルを防ぐことが出来ます。

– Brittany Trout(DAN America)
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