【Incident Report】残圧のないタンクでダイビング

【Incident Report】残圧のないタンクでダイビング

ダイビング前チェックをせず、水中でタンクが空だと気付いた

[報告されたケース]

妻と私は、トワイライト(日没前後)とナイトの2本のダイビングを予定していました。
ナイトダイビングで、新人ダイバーである妻が先にエントリーした後、私は素早く器材を装着し、レギュレーターとBCDのインフレーターをチェックしました。ところが、残圧計をチェックするのを忘れていました。

私がエントリーした後、ダイブマスターがガイドするグループは素早く潜降し始め、マンタポイントへと進んでゆきました。私はゆっくりと潜降していたので、グループの一番後ろにつくことになりました。妻は私から約9m程前で泳いでいました。

そのうちに、私はレギュレーターがすごく吸いづらいことに気づきました。
次に吸うと、一息の半分ぐらいしかエアが供給されず、自分のタンクが空だということに気づきました。私は、妻のところに行くか、浮上するかを決断し、妻の方に向かうことに決めました。妻は私から離れて行っていましたが、なんとか追いつくことが出来ました。

しかし、妻に手が届いた時には、私はすでにエア切れの状態でした。なんとかオクトパスをつかみ取りましたが、最初は上下逆さに口に入れたため、呼吸ができませんでした。さらに数回試し、半分水が混じった空気を吸って水面までようやくたどり着ける程度の空気を確保することができました。

妻に浮上の合図を出し、私たちは緊急浮上しました。
浮上の際、私はウェイトを捨て、妻はBCDを膨らませました。(私のタンクは空で、パワーインフレーターを使用できませんでした。) 私たちは水面で大声をあげて助けを求め、しばらくしてようやくスノーケリングのインストラクターが助けに来てくれました。その後、私たちが乗ってきたのと違うボートに案内され、水から上がりました。
私は少し海水を飲んでしまいましたが、2人共ケガはありませんでした。

ダイビング後の器材セッティングとタンク交換は、本来ボートクルーの責任でした。そして、ほとんど残圧のないタンクを渡されたにもかかわらず、自分で残圧計の確認をしなかったためにタンクが空だったことに気付かなかったのだ、と結論づけました。

[専門家からのコメント]

ダイビング前のチェックをしなかったことが原因で、ダイバーの命は失われていたかもしれません。ダイビング前チェックで、十分な残圧があることや、レギュレーターが正常に作動することを確認できます。

今回のケースで、なぜチェックを忘れるという危険な状況が生じたのでしょうか。
結婚していたとしても、自動的にそのパートナーと完璧なバディ関係が築ける訳ではありません。誰とバディを組むにしても、毎回潜る前にバディダイビングのルールを確認するべきでしょう。ダイビング前チェックリストの全ての項目をバディが一緒に確認し、一緒にエントリーするべきです。エントリー直後は、空気の漏れがないかどうかも点検し、ダイビング前チェックを完了させてください。

別々にエントリーしたバディは、おそらく水中でも離れたままで、お互いにアシストしあうことはできないでしょう。今回のケースで、エアが完全に無くなる前に妻に追いつくことができたのは、単なる幸運に過ぎません。

– Petar Denoble, M.D., D.Sc.
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