【Medical FAQ/医療相談】乳がん手術後のダイビング復帰

【Medical FAQ/医療相談】乳がん手術後のダイビング復帰

◆相談内容◆

質問者:女性・43歳
乳がんのため、5か月前に乳房の摘出と穿通枝皮弁法での再建手術を受けました。
手術1ヶ月後からは再発を防ぐためのホルモン療法としてノルバデックスを服用しています。服薬は5年間続く予定です。手術の傷口も落ち着いてきたし、日常生活や運動にも支障がなくなってきたので、そろそろダイビングに復帰したいと思っています。ただ、乳房再建のときに血管をつなぐ手術をしているので、ダイビングをしても血管は大丈夫か気になっています。
近いうちに主治医の先生に相談してみようと思っていますが、ダイビングを再開するにあたって、確認しておくべきこと、注意すべきことはあるでしょうか。

◆医師からの回答◆

皮弁の詳細が不明ですが、特に問題はないと考えます。
乳がん切除後の再建術には様々な方法があります。穿通枝皮弁による再建は、手技が難しく、誰でも出来るわけではありません。しかし、例えば下腹部からの移植では、腹直筋を犠牲にせずに乳房再建が可能となりますし、人工物(インプラント)を挿入する必要がない利点もあります。皮弁手術直後の皮弁の血行は不安定であり、局所安静、場合によっては抗凝固療法が行われます。当該手術では微小血管縫合を要しますが、縫合部は血栓形成により再閉塞しやすいからです。 しかし、術後数日間生き残った縫合血管が、その後に再閉塞する危険性は小さいです。

また、皮弁に関して、当初は縫合した血管に全面的に栄養を依存しているため、縫合血管が閉塞すると皮弁も壊死(腐る)します。それが、創治癒(傷が治る)後は、皮弁には周辺の組織から血管が入ってきます。そのため、縫合血管だけに栄養を依存しなくなります(普通の皮膚と同じ状態になります)。 よって、創治癒しているのであれば、皮弁によってダイビングが制約されることはないと思います。

ただ、皮弁の詳細が不明にて、担当医には、皮弁については上記のように理解してダイビング再開を考えているが、大丈夫ですか、と確認することが良いかと思います。

なお、質問に具体的には言及がありませんでしたが、乳がんでは別の問題もあります。

【放射線治療・化学療法(抗がん剤治療)】
治療として放射線治療、化学療法が行われることがあります。両者ともに、時に肺障害を生じます。 よって、放射線、化学療法中にダイビング復帰は勧められませんし、治療後の復帰の際には、呼吸器内科で肺機能について相談することが勧められます。

【ホルモン療法】
ノルバテックスのようなホルモン剤ではまれにホットフラッシュ、嘔気等、副作用が生じます。 副作用が強い場合は、ダイビング再開前に主治医と相談した方がよいでしょう。 また、まれな副作用として血栓塞栓症(血が固まりやすい)、間質性肺炎、視力障害などがあります。例えば、咳がひどい、などがあれば主治医と相談した方がよいでしょう。 ダイビングに関していえば、脱水は血栓塞栓症を誘発し、減圧障害のリスクを高めますので、水分補給には気を付けて下さい。

ホルモン療法の副作用として体重増加も見られるようです。 肥満はダイビングにおける危険因子とされているので、体重コントロールには気を付けてください。(DANメディカルチェックガイドラインより)

【乳がん手術合併症】
乳がん手術では肩関節が固くなる方もおり、極端に動かない場合は、ダイビング時に支障が生じますし、乳がん術(リンパ節郭清)後にリンパ浮腫で上肢が腫れる方もいます。 ただ、日常生活・運動に支障がないとの記載からは、問題がないものと推察します。

以上、チェックする点、気を付ける点はありますが、今回の情報からは、ダイビングを禁止する理由は無いのではと考えました。以上を踏まえて、次回に主治医に相談されたらいかがでしょうか。

無事のダイビング復帰をお祈りしています。

-DAN JAPANメディカルチーム

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