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【Medical FAQ/医療相談】首のヘルニア後のダイビング復帰

【Medical FAQ/医療相談】首のヘルニア後のダイビング復帰

◆相談内容◆

質問者:男性・34歳
3月下旬に首のヘルニアになりました。原因はスノーボードによる転倒です。
現在、後遺症なく生活していますが、ヘルニアでダイビングを続けることは大丈夫でしょうか。
診断をした医師からは、ダイビングの経験がないため判断できないと言われました。
【症状】
朝起きたら首が痛い、左手があがらない
【診断】
MRI(C6/7・C5/6に椎間板の左側優位の膨隆)
【発症後の治療経過、いつ頃に回復に至ったか】
首にコルセットを装着し、温存療法→発症から1週間後、痛みがなくなる→発症から1ヶ月後、腕のしびれが無くなる
【担当の医師から治療後の日常生活動作に関するアドバイスがあったか】
マラソン・ゴルフ・自転車の禁止(3年から5年)、うつぶせの態勢の禁止、首のストレッチを行う

◆医師からの回答◆

◎頚椎椎間板ヘルニアとは?
頚椎椎間板ヘルニアは、背骨をつなぐクッションの役割をしている椎間板が、主に加齢変化により後方に飛び出すことによって起こります。30~50歳代に多く、しばしば誘因なく発症します。悪い姿勢での仕事やスポーツなどが誘因になることもあります。飛び出す場所により、神経根の圧迫、脊髄の圧迫、あるいは両者の圧迫が生じます(1)
首や肩甲部、上肢に痛みやしびれが放散したり(神経根の圧迫による症状)、箸が使いにくくなったり、ボタンがかけづらくなったり、足のもつれ、歩行障害が出たりすることもあります(脊髄の圧迫による症状)。
似たような症状を生じる疾患に、頚椎症性神経根症や、頚椎症性脊髄症があります(2)
治療は、首の安静(コルセット等)、投薬などの保存治療が行われますが、症状経過によっては手術治療も選択されます。一般的には、神経根症状だけ出ている場合は保存治療が成功することが多いですが、脊髄症状が出ている場合は、手術となる確率が高くなります。

◎治療中のダイビングは?
ヘルニア治療中の潜水は勧められません。
ヘルニアの症状として、首を後方や斜め後方へそらせることで症状が出現(増強)することがあります。潜水は水平姿勢で泳ぎながら前方を見ることが多く、まさに首が後ろにそった状況になりがちです。
また、潜水は約20kgの器材を背負って行うため、重量物を負荷することによって、症状が悪化したり、安全確保が出来ない可能性があります。
さらに、このようにして神経症状が悪化した場合、減圧症の発症との区別が困難となる可能性があります。例えば、潜水後に痛みが出ても「以前にヘルニアやってるから、それが原因に違いない。」と判断し、再圧治療施設への連絡が遅れる、もしくは反対に、減圧症だと思って再圧治療施設を受診したがヘルニアの再発だった、という状況です。後者は緊急性はあまりありませんが、前者だった場合には再圧治療のタイミングを逃す可能性があります。

◎治癒したあとのダイビングは?
基本的には治癒(神経症状が消失)した場合の潜水は可能です。

【今回の質問者のケース】
質問者様の「首にコルセットを装着して温存療法をおこない、発症から1ヶ月後に腕のしびれがなくなった」「現在、後遺症なく生活」という経過からは、ヘルニアにより神経根症状が出現したものの保存療法で良好に治ってきている可能性が高いと推察します(主治医に確認してください)。もし治癒しているのであれば潜水は基本的に可能です。
ただし主治医からの生活指導に「マラソン・ゴルフ・自転車の禁止(3年から5年)、うつぶせの態勢の禁止」が含まれているとのことで、これらの首を後ろにそらさないための予防指示が必須な状況なのであれば、完全な治癒とはいいがたく、したがって潜水も勧め難い状況です。指示の根拠が質問者様からの情報だけでは判断できませんが、症状が消失してもMRI上大きなヘルニアが残存しているなど、なにか事情があるのでしょうか?
ヘルニアの症状の出方や治癒の状況は個人差が大きいため、主治医との相談が必要です。主治医はダイビングの経験がない、とのことでしたが、まずは治癒の状況、前述の3-5年禁止指示の根拠を主治医に確認してください。そのうえで、「ヘルニア治療中の潜水は勧められない」「治癒(神経症状が消失)した場合の潜水は基本可能」というDAN医師の意見を伝え、通常の運動適性と比較してどのような診断となるか相談し、「復帰の時期」、さらには「どの様なダイビングをするか」を検討しましょう。

《参考文献または参考元》
(1) 日本整形外科学会パンフレット「整形外科シリーズ6 頚椎椎間板ヘルニア」
(2) 日本整形外科学会パンフレット「整形外科シリーズ12 頚椎症」

―DAN JAPANメディカルチーム