【Medical FAQ/医療相談】数か月前の潜水による減圧症の疑い

【Medical FAQ/医療相談】数か月前の潜水による減圧症の疑い

◆相談内容◆

質問者:インストラクター(30歳代女性ゲストについて)

【ダイビングプロフィール】
●1日目
①潜水時間:51分、最大水深:36.8m(平均19m)
(最後に残圧が少なくなり、減圧途中でいったん浮上。再度潜水し減圧した。)
水面休息時間:94分
②潜水時間:55分、最大水深:19m(平均11m)
●2日目
①潜水時間:45分、最大水深:31.6m(平均15.8m)
水面休息時間:74分
②潜水時間:45分、最大水深:29m(平均16.2m)

潜水当日は全く症状がなかったのですが、潜水から数日後に「血圧が下がった感じがして寒気がして体が震える、胸が苦しい」という症状が出現。
以後、疲れた時に「血圧が下がった感じがして寒気がして体が震える、手がしびれる、体力が落ちたように感じる、体に力が入らない感じがする、頭痛、めまい、食欲不振、副鼻腔が痛くて重い、胸が痛む」といった症状が出現。

さらに、潜水から7か月後に頭痛、手足のしびれ、口の周りのしびれの症状が出現したそうです。
現在、潜水から10か月後ですが 、「昨夜、就寝中に窒息しそうになって目が覚め、全身の震え、胸の痛みが突発的にでた。数分で収まった。」と言った症状を訴えておられます。

これだけ時間が経つと因果関係も微妙かと思うのですが、減圧症の可能性はありえますでしょうか?
減圧症疑いの場合、再圧治療は価値がありますでしょうか。
最初の症状が出た時にはお聞きしておらず、今日初めて話をお聞きしたので、どのように考えればよいかと感じています。

◆医師からの回答◆

◎減圧症の発症時期は?
減圧症の発症時期は、米海軍データベースでは水面浮上1時間以内42%、8時間以内83%、24時間以内98%であり、数日後より発症した症状に関しては一般的には減圧症でない可能性が高くなります。軽症であったために本人が発症に気づかずに時間が経過した、という場合もありますが、軽い症状であれば時間経過とともに徐々に改善することが多く、その後長期にわたり症状が持続していることは考えづらいといえます。
◎再圧治療のタイミングは?

仮に、減圧症であった場合、減圧症では早期治療が原則です。
医療機関によっては発症後1ー2か月程度までは治療効果があるとの判断で再圧治療を行うこともありますが、それ以上経過した場合は一般的には再圧治療の適応はありません。なお、参考までに、健康保険での再圧治療の適応は発症後1か月以内となっています。
◎今回のゲストの場合
今回の潜水プロフィールを見ると、窒素負荷が大きく、減圧症を発症しても不思議ではありません。
しかし、最初の症状が潜水の数日後より生じていることを考えると、一般的には減圧症ではないと考えられます。また、潜水から7か月後、10か月後から初めて出現した症状を約10か月前の潜水と関連づけることは困難です。よって、現状で積極的に減圧症を疑う理由は少ないと思われます。
また、仮に減圧症であったとしても、発症から10か月がすでに経過しているため、一般的には再圧治療のタイミングを逃しており治療適応はないと考えられます。以上より、実際に再圧治療が行われる可能性は否定的ですが、心配であれば潜水医学に詳しい医師への受診を勧めることは、担当インストラクターとして妥当な判断の一つと考えます。

―DAN JAPANメディカルチーム

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