【Incident Report】シャワー後に現れた 一過性の神経症状を伴った皮膚減圧症

【Incident Report】シャワー後に現れた 一過性の神経症状を伴った皮膚減圧症

熱いシャワーの後、目のかすみと軽いめまい(ふらつき感)を伴って
発疹とみみずばれが身体に現れた

[報告されたケース]
私はアドバンスダイバーで、200本以上のダイビング経験があります。
メキシコでの休暇中、4日間で計9本のダイビングをしました。全てのダイビングで圧縮空気を使用し、適切な安全停止を実施しました。さらに、同じ日に複数のダイビングをする場合、少なくとも1時間の水面休息をとりました。ダイビングコンピューターを使用して潜水を計画しました。

◆1日目◆
1本目:最大水深 18m、潜水時間 45分、安全停止 5分
2本目:水深記録なし、潜水時間 40分、安全停止 5分

◆2日目◆
1本目:最大水深 21m、潜水時間 46分、安全停止 5分(水面休息時間1時間)
2本目:最大水深 15m、潜水時間 50分、安全停止 3分

◆3日目◆
1本目:最大水深 20m、潜水時間 45分、安全停止 5分
2本目:最大水深 15m、潜水時間 50分、安全停止 3分
※2本目の後、かゆみを感じたが、シャワーを浴びたら消えたように思ったので、無視した。

◆4日目◆
1本目:最大水深 24m、潜水時間 40分、安全停止 5分(水面休息時間65分)
2本目:最大水深 10m、潜水時間 55分、安全停止 3分(ホテルに戻り昼食)
3本目:最大水深 5m、潜水時間 54分、安全停止なし(ビーチダイビング)

4日目の最終ダイビングの約3時間後、宿泊先に戻りシャワーを浴びている最中に、皮膚がひどくかゆくなりました。かゆみは悪化し続け、おしりに近い腰と右胸に痛みも出てきました。視界がぼやけ、軽いめまい(ふらつき感)がありましたが、夕食後には落ち着きました。そして、皮膚に赤いシミのような発疹と、みみずばれがあることに気づきました(写真1)。

【写真1】

DANの緊急ホットラインに電話したところ、宿泊先から近い医師を紹介されました。
医師は私の症状を診察し、皮膚減圧症(DCS)、すなわちスキン・ベンズと診断しました。医師からは、窒素は身体の脂肪のある部位に行く傾向があると説明されました。そうだとすると、おしりに近い腰と右胸に痛みがある理由が説明できます。翌日、経過観察のために再診するよう指示されました。

痛みと発疹は、診断を受けた次の日に消えました。医師からは「今回の旅行中のダイビングは禁止」と強く指示されました。休暇から帰り、いくらかヒリヒリ感がありましたが、それは高度変化によるものだと考えました。DANは私に必要なサポートを全て提供してくれたうえに、治療費はダイビング事故保険で補償されました。DANの会員でなかったらどうなっていたか、想像もつきません。

[専門家からのコメント]
今回報告された症状、徴候の出現や進行の状況は、珍しいケースではありません。このダイバーの経験は、他のダイバーによって報告されたものとほぼ同じです。皮膚に症状が出た症例の20%近くで、神経症状-例えば、目がぼやける、めまい(ふらつき感)、意識混乱など-が付随することを知っておくことは重要です。神経症状の中にはわかりにくいものがあるため、明白な神経症状がある/なしに係わらず、必ずダイビングに詳しい医師への受診を推奨します。

通常、皮膚に症状が出た症例では、まず常圧下の酸素を投与します。神経症状が現れている場合、医師は再圧治療を選択する可能性があります。

一生に1回しか皮膚減圧症を経験しないダイバーもいますし、何度も不規則に症状を経験するダイバーもいます。皮膚減圧症の症状が出現する理由も、正確な発症メカニズムもはっきりとはわかっていません。しかし、このダイバーが説明を受けたように、一般的に影響を受ける部位は脂肪組織のある部位に多い傾向があります。最初、かゆみが出て、大体、写真のように皮膚が斑点または擦り傷のように見えるような状態になります。しかしほとんどの場合、かゆみと斑点は皮膚減圧症以外の原因によるものである、と診断されてしまいます。

減圧症ではない一般的な皮膚反応や発疹は、上記とは異なった形で現れます。その違いを区別できることは、非常に重要です。
このダイバーが説明しているように、表面だけではなく皮膚のより深いところでも痛みやヒリヒリ感があります。ヒリヒリ感は、筋肉を酷使した時の痛みに似ている、と表現される場合もあります。この深部のヒリヒリ感は、一般的な発疹と皮膚減圧症とを区別するのに役立つ方法の1つです。

もし皮膚減圧症が疑われる場合には、ダイビングを中止し、可能であれば医師の診察を受けてください。適切な応急手当は陸上で酸素を吸うことですが、神経検査もなるべく早くに受けてください。
症状が出た場合、その旅行期間中はそれ以上ダイビングをしないことを推奨します。もしも危険性を知りながらもダイビングを続ける、と決めたならば、すべての斑点とヒリヒリ感が完全に解消するまでは待つ必要があります。完全に解消する前にダイビングを行うと症状がぶり返し、症状が悪化する可能性が高くなります。

もし、あなたが皮膚減圧症を何度も経験するような珍しい人であれば、潜在的な問題があるかどうか検査することを推奨します。DANでは、担当医と共に検査方法を検討することも可能です。

– Marty McCafferty, EMT-P, DMT

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